Chapter 388
本日は音楽の先生とのお茶会である。この時期に講義を終えている学生は非常に少ない上に、去年はエグランティーヌとアナスタージウスが同席したことで、色々とハプニングが起こったため、学生はわたしだけというお茶会になった。
一応「新曲を拝聴したいだけですから、ローゼマイン様のご負担が少ない方が良いでしょう」という先生方の配慮だ。去年、エグランティーヌにアナスタージウスが強引に入ってきて大変なことになったので、先生方の配慮はありがたい。
音楽の先生方が一番喜ぶのは新しい曲なので、持って行くお菓子はカトルカールで去年と同じだ。ロジーナにアレンジしてもらった新曲を披露する場である。他のお茶会で新曲を披露される前に、自分達が一番に聴きたいのだそうだ。
シャルロッテからお茶会での話題の振り方を教えられた。「お姉様以外に先生方からお話を伺える者はエーレンフェストにいません。頼りにしています」と言われてしまったのだ。全力で頑張りたいと思う。
……わたし、頼りになるお姉様だからね。
「ようこそ、ローゼマイン様」
パウリーネが迎え入れてくれ、挨拶を交わしている間に側仕え達が土産物を並べたり、ロジーナがフェシュピールの準備をしたりする。
挨拶を終えたパウリーネがわたしを席に案内し、お茶を飲み、お菓子を一口食べて見せてくれた。わたしは自分で持ってきたカトルカールを一口食べてお互いのお菓子の毒見を終えると、お茶会の始まりだ。
わたしはロジーナに演奏するように視線を向けて軽く頷いた後、先生方に新曲の紹介をする。
「新しい曲は水の女神に捧げる曲なのです」
「ローゼマイン様は神に捧げる曲ばかりですね。他の曲は作りませんの?」
パウリーネがおっとりと首を傾げて尋ねる。わたしはニコリと笑って答えた。
「わたくしは神殿育ちですから、神々が最も身近な題材なのです」
正確には作詞やアレンジをするロジーナが神殿育ちなので、歌詞を作り直すにも神話を元にするのが無難なのだ。
わたしの視線を受けたロジーナがフェシュピールを構えて奏で始める。水の女神に捧げる曲はヒーリング効果のありそうなゆったりした曲だ。クラシックを元にしてある。
「ローゼマイン様もあと数年たてば、神に捧げる曲ではなく、恋歌を作るようになるのかしら? ヴィルフリート様とご婚約されたのでしょう?」
「婚約は決まりましたが、それがどのように恋歌に結びつくのでしょう? わたくしには先のことを想像することが少し難しいです」
クスクスと笑う先生方の言葉をわたしは笑顔で流しておく。ロジーナが恋をすることがあれば、恋歌ができる可能性はあるのだが、楽器一筋でわたしと一緒に神殿と城を行き来している現状では、ロジーナに碌に出会いがないまま、適齢期を越えてしまいそうだ。
……でも、恋歌はわたしが作るわけにはいかないからね。
ロジーナではなく、わたしが恋歌を作るのは止めた方が良いだろう。恋愛小説でさえ神官長に破廉恥呼ばわりされてしまったのに、こちらの恋歌をよく理解しないままに作詞して、他の人に破廉恥という評価を付けられたら大変だ。わたしだけではなく、エーレンフェストまでそんな評価になってしまう。
「それにしても、エーレンフェストはずいぶんと成績を上げていますね。去年の成績には驚きましたもの。今年も二年生は初日に全員合格したのでしょう?」
「社会学はエーレンフェストしか合格者が出ていないと伺っていますよ」
「音楽でも低学年の下級貴族の頑張りが素晴らしいですね」
音楽は特に教師や楽器に差があるため、下級貴族はこれまでいまいちという評価が多かったようだ。けれど、エーレンフェストの低学年では下級貴族でも結構上手にフェシュピールを弾く者がいる。全体的にレベルが上がっている、と褒められた。
「エーレンフェストの下級貴族達は口を揃えて、ローゼマイン様のおかげです、と言うのです。どのようにされたのです?」
興味深そうに尋ねられ、わたしは小さく笑った。
「わたくしは底上げの重視を提案しただけですわ。取り入れると決めたのはアウブ・エーレンフェストですし、わたくしが眠っている間、実行してくれたのはヴィルフリート兄様とシャルロッテですから、決してわたくしの功績ではないのです」
それ以上の追及をかわすため、わたしは最近の中央の情勢について話を振る。シャルロッテに言われた通り、「わたしが作った曲は中央に広がっているのかどうか」を尋ねてみた。
先生方が楽しそうに目を輝かせて、中央での音楽事情について教えてくれる。
「えぇ。ローゼマイン様の作られた曲は、アナスタージウス王子やエグランティーヌ様が中心となっていたせいでしょうね。驚くほどの速さで広がりました」
「色々なお茶会で拝聴しましたし、わたくし達も新しい曲を聴きたいといくつものお茶会に招かれましたわ」
「特に、人気が高い曲は光の女神に捧げる曲です。アナスタージウス王子がエグランティーヌ様を射止めた曲として、お二人の恋物語と共に流行しています」
アナスタージウスが王位よりもエグランティーヌを求め、二人で王族としてジギスヴァルトを支えていくと公言したことは中央を始め、上位領地を相当驚かせたようだ。
「アナスタージウス王子に肩入れしていた方々からはエグランティーヌ様を射止められたのに何故、と驚きの声が上がっておりました。そして、エグランティーヌ様のために空けられていた第一夫人の座にはアドルフィーネ様が就くことに決まったそうですよ」
ジギスヴァルトが卒業式の時にエスコートした相手は中領地の領主候補生だったようで、最初から第二夫人として結婚し、第一夫人の座は空けられていたらしい。エグランティーヌがアナスタージウスと婚約したことで、王座に就くために大領地から第一夫人を娶ることになり、アドルフィーネに白羽の矢が立ったそうだ。
「ジギスヴァルト王子と同じ年の女性はご結婚されていらっしゃる方も多いですからね」
「アナスタージウス王子がジギスヴァルト王子に譲ったことに驚かれる方は多かったですけれど、王位を巡った争いが回避されましたことに胸を撫で下ろす者はもっと多いです」
ジギスヴァルトとアナスタージウスは共に第一夫人の子であり、年が近く、魔力量も同じくらいで甲乙つけがたいらしい。二人が王位を望んでいたので、代替わりの際にはまた大変な争いが起こるのでは、と思われていたそうだ。
「ヒルデブラント王子は第三夫人の子ですし、年も少し離れておりますから、最初から臣下として育てられていますものね」
「このまますんなりと代替わりができればよいのですけれど……」
パウリーネがそう言って軽く溜息を吐くと、他の先生方も同意した。アナスタージウスが候補から下りて、ヒルデブラントが最初から臣下として育てられているならば、特に問題らしい問題は見当たらない。
「他に何か憂慮しなければならない問題があるのですか?」
「中央の神殿の聖典原理主義者が少し……。ですが、声高に反対しているのは神殿だけですから、特に問題はございませんよ」
「貴族にとって神殿の言葉など大した意味はございません。貴族が耳を傾けるのは貴族の言葉ですから」
パウリーネはわたしを見てニコリと笑うとお茶を飲んだ。
「素晴らしい成果です、ローゼマイン様」
お茶会を終えて寮に戻り、昼食を摂りながら今日のお茶会の様子をフィリーネや側仕え達が報告すると、ハルトムートが歓喜に満ちた顔で褒めてくれた。これまで繋がりがほとんどなく、中央の情報が入りにくい状態だったエーレンフェストにとって、とても大きな収穫だったらしい。
「神殿でお育ちのローゼマイン様が聖典原理主義者ではないか、パウリーネ先生はそれとなく探っていたようですけれど、ローゼマイン様が全く反応しなかったので、安心したように見えましたわ」
ブリュンヒルデの言葉にわたしは首を傾げる。
「あの、聖典原理主義とは何でしょう? わたくし、耳にしたことがないのですけれど……」
あまり馴染みのある言葉ではないようだ。皆が首を傾げる中、リヒャルダが記憶を探るように頬を押さえて視線を少し上に向ける。
「わたくしも詳しくは存じませんが、聖典に載っていることが最も正しく、王も聖典に従うべきだと主張する団体だと認識しています」
政変で王族がごたごたすると、思い出したかのように出てきては神殿の発言権を少しでも大きくしようと奮闘する団体らしい。
「神殿育ちのローゼマイン様がご存知ないのでしたら、エーレンフェストの神殿には関係がない団体なのでしょうね」
所詮、貴族になれない者達の言葉なので耳を傾ける必要はございません、という言葉で話は終わった。
「では、今夜にでも音楽の先生方とのお茶会で得た情報をまとめてエーレンフェストに報告いたします」
「えぇ、お願いします」
文官見習いであるハルトムートとフィリーネにエーレンフェストへの報告を頼んでおく。
「午後の実技で合格すれば、ローゼマイン様は図書館へ行けるのですね?」
「そうです。今日の実技は絶対に合格したいと思っています」
午後からは調合の実技がある。これで図書館に行けるかどうかが決まるのだ。
調合服に着替えて、小広間へと入ると、今日もヒルシュールは魔術具を使うようだ。壁に白い布が張ってある。
「では、本日は求婚に使う魔石の作成方法を勉強します」
ヒルシュールはそう言いながら、白い布に調合の手順を映し出した。
「求婚をする時も、求婚を受ける時にも必要になります。これは将来誰しも必要になるものですから、丁寧に作ってくださいませ」
今日は練習用なので質にこだわっていないけれど、本来の求婚用の魔石では、まず、自分に準備できる中で最も品質の高い魔石を準備する。そして、その魔石を自分の魔力で染める。
自分の魔力で染まった魔石に、相手の属性の魔力を込めていく。自分と同じ属性の場合は特に必要がない課程になるが、相手の属性を自分が持っていない場合は、その属性を持つ魔石を調合で合わせていかなければならない。
……わたし、全属性を持っているんだけどね。
今日は練習なので、必ず一つは属性を追加するように、ということだ。そうして属性の合成を行った後、求愛の文字を入れる。魔石に文字が浮かぶようにするらしい。麗乃時代の母親が大事にしていた婚約指輪に文字が刻まれていたようなものだと思う。
わたしは自分の魔力で魔石を染めるのは何度も経験があるので、さっさと魔石を染めると調合鍋がある前のテーブルへと向かった。ユレーヴェ作りのための魔石を染めることに比べれば、講義で使う品質の魔石を染めるのは簡単なことだ。
「もう染まったのですか?」
ヒルシュールが目を瞬いてそう言ったので、わたしは自分の魔力で染めた青い魔石を見せる。ヒルシュールが顔を近付けて確認し、「本当に染まっていますね」と呟いた。
「小さいですし、品質も高くありませんから、それほど時間はかかりませんよ」
「時間がかかるのですよ、普通は」
調合鍋の隣に属性を加えるための黄色の魔石や石に刻むための言葉を書いた羊皮紙を並べていく。わたしは全属性を持っているけれど、一応練習のために風の属性の魔石を準備した。
「ローゼマイン様はどのような言葉を入れますの?」
ヒルシュールが楽しそうにそう言って、羊皮紙へと手を伸ばした。
「どのような言葉と言われましても……」
定例文とも言えるよく使われるフレーズがあるので、それを刻めばよいはずだ。「わたくしの闇の神へ」とか「貴方の光の女神でありたい」とか、その辺りが無難なところだと思う。 羊皮紙に書かれた「わたくしの闇の神へ」という言葉を見たヒルシュールがものすごくつまらなそうに溜息を吐いた。
「ローゼマイン様、お相手の方の心を打つような言葉でなければ、簡単に合格は差し上げられません」
「え!? 練習ですし、魔石が仕上がれば良いではありませんか」
「いいえ。時間はたくさんありますし、ローゼマイン様はすでに婚約者がいるのですから、ヴィルフリート様に贈るつもりで求愛の言葉を考えてくださいませ」
……何それ!? 今から愛の言葉を考えろと?
「わたくしはローゼマイン様らしい言葉を拝見したいのです。たくさんの本を読んでいらっしゃるローゼマイン様ならば、それほど難しくはないでしょう? エルヴィーラ様の本には素敵な言葉もたくさん出てきましたもの」
……ああぁぁぁ! 神様がどんどん出てくる愛の言葉やラブシーンが理解できなくて流し読みしてたなんて言えないっ! 誰か素敵な愛の言葉、プリーズ!
これまで神官長に叩き込まれてきたどの調合よりも難易度が高い。わたしは調合の実技で初めて手を止めて考え込む羽目になった。
……どどど、どうしよう!? 「愛してる」とか「大好き」辺りが愛の言葉としてはオーソドックスなんだけど、神官長に相談しなきゃ大丈夫なのかどうかわからないよ!
麗乃時代ならばオーソドックスだが、こちらではどのような扱いになるのかわからない。比喩的な言葉や貴族らしい遠回しな言葉が喜ばれるのはわかるけれど、それが一体どんな言葉なのか、今のわたしには判断できないのだ。
「ずいぶんと難しいお顔ですね、ローゼマイン様」
「わたくしのような子供に求愛の言葉を考えさせるのが間違っていると思います」
「とりあえず、ローゼマイン様が贈られて嬉しい求愛の言葉を考えるところから始めてみてはいかがです? 少しは参考になるかもしれませんよ」
ヒルシュールがクスクスと笑いながらそう言ったことで、わたしは自分が贈られて嬉しい求愛の言葉を考えることにした。
……うーん、やっぱり「毎朝、お味噌汁が食べたい」とか「君のための図書館を贈るよ」とか?
頭にすっと浮かんだ言葉をヒルシュールに相談してみたが、不可解という顔ですぐさま却下されてしまった。
「ローゼマイン様、オミソシルとはどのような食べ物でしょう? またエーレンフェストで新しく作られた料理ですか?」
「エーレンフェストにはない料理で、わたくしが食べてみたいと思っている料理ですわ」
わたしの返事にヒルシュールは深々と溜息を吐いて、頭を振った。
「ローゼマイン様が喜ぶ言葉はわかりましたけれど、その言葉でヴィルフリート様は喜ばれますか?」
……そりゃ味噌汁が食べたいのはわたしだし、図書館を贈られてときめくヴィルフリート兄様の姿は思い浮かばないよ。
「ヒルシュール先生がわたくしらしい言葉とおっしゃったではありませんか」
「ローゼマイン様らしく、かつ、ヴィルフリート様が喜ばれる言葉ですよ。もう少し殿方を喜ばせようとする努力を見せてくださいませ」
彼氏いない歴が年齢に等しかったわたしには難易度が高すぎる。男の人が喜ぶ言葉がポンポン出てくるような女子力高めの女の子だったら、麗乃時代にも彼氏の一人くらいはいたに違いないし、しゅーちゃんにバカにされることはなかったはずだ。
貴方好みの女になりますという謙虚さが全くないとか、我が道を突っ走りすぎだとか、ずっと言われてきたのだ。いっそ「わたし色に染めてあげる」の方がわたしらしい求愛の言葉になるかもしれない。
……謙虚さ、ねぇ。
「貴方の色に染めてください、ならば謙虚さが出て、殿方に喜ばれるのでしょうか?」
「まぁまぁまぁ!」
ヒルシュールがひどく楽しそうに、かつ、面白がるように目を輝かせた。何というか、お母様が恋愛話に食いつく時の表情に酷似している。
「ローゼマイン様は少しおませさんですわね。背伸びしたいお年頃ですもの。その気持ちはわかりますけれど、その言葉を刻んだ魔石をヴィルフリート様に捧げるのは成人してからになさいませ。今日は最初の言葉で作りましょう」
この言葉を見たヴィルフリートの反応がとても楽しみなので、本番の求愛の言葉はそれで作って成人後に渡せ、と言われてしまった。ヒルシュールの食いつき方と表情から察するに、あまり人には言えない言葉ではないだろうか。
……成人後ってことは、まさか、破廉恥系? 神官長に怒られる系?
「ヒルシュール先生、フェルディナンド様に見せて叱られそうな言葉ではありませんよね?」
わたしが恐る恐る尋ねてみると、ヒルシュールは少し考え込んだ後、ニィッと唇の端を上げていく。
「フェルディナンド様がご覧になることはございません。求愛の言葉はお相手だけに捧げる言葉ですからね」
……見られなかったら大丈夫ってことは、見られたら怒られる言葉じゃ!?
「ローゼマイン様、時間がなくなりますよ。今日中に合格するのでしょう?」
ヒルシュールの言葉にハッとして、わたしは急いで調合に取りかかった。求愛の言葉を考えろ、と言って邪魔をしたのは誰ですか? と言いたかったけれど、文句を呑み込んでシュタープを出す。
ユレーヴェ作りの時にも属性を合わせていく調合をしていたので、何事もなく調合自体は簡単に済んだ。
濃い青のビー玉のような魔石の中に金色で文字が浮かび上がって見える。
「ローゼマイン様、合格です」
……よしっ! これで図書館に行けるっ!
「ヴィルフリート兄様、合格しました。これで図書館に行けます」
「……早いな。私は魔力で染めるのが難しいというのに」
ヴィルフリートがなかなか染まらない魔石を睨みながらそう言った。
「調合する時と違って、できるだけ一気に魔力を流し込んだ方が効率は良いですよ」
魔石を染めるのは時間よりも、その時に流し込む魔力の量が大事だ。魔石の抵抗をねじ伏せるような勢いで魔力を叩きつける方が時間もかからないし、最終的に必要な魔力が少なくて済む。魔力の量が少ない下級貴族は時間をかけるしかないのだが、ここにいる上級貴族や領主候補生ならば、何とかなるだろう。
「……早く教えてくれ、ローゼマイン。すでに結構魔力を使った後だ」
「では、今日は魔石を染めるだけで済ませるしかありませんね。完全に染めてしまわなければ、少しずつ魔力が押し出されていくそうですから、魔力を無駄にしないためにも頑張ってくださいませ」
周囲の学生達が驚いたように目を瞬いて、こちらを見た。これまで魔術具を使って魔石を染めていて、わたしが手の上に持っているだけで形を崩すようなクズ魔石しか扱ったことがない他の学生は完全に染めてしまわなければ魔力が押し出されていくことを知らなかったようだ。わたしもダームエルに言われるまで知らなかったけれど。
……だって、わたしは採集したその場でなるべく染めるようにって言われてたし。
「できるだけ一気に……」
ヴィルフリートが魔石に集中して、魔力を流していくのがわかる。ヴィルフリートの隣で魔石を染めていたハンネローレやオルトヴィーンも表情を引き締めて、魔石を握り直した。
「できました!」
一番に華やいだ声を上げたのはハンネローレだった。さすが大領地の領主候補生である。魔力量が多いのだろう。瞳によく似た色合いの赤い魔石をわたしに見せてくれる。
「ローゼマイン様の助言のおかげですね」
「ハンネローレ様の魔力量と扱いが良かったのですよ」
「わたくし、どちらかというとあまり魔力の扱いに慣れていませんから、ローゼマイン様の助言がなければなかなか終わらなかったと思います」
お友達が喜んでくれるのは嬉しい。わたしは魔石を調合する時のコツについて、いくつか教えてあげる。早く一緒に図書委員をしたいから、ハンネローレの合格は全力でサポートしたい。
調合の時間が終わるまでハンネローレに付きっきりで助言していたら、ヴィルフリートがちょっと拗ねた。
「……ローゼマイン、私に助言はないのか?」
「そうですね。ヴィルフリート兄様も図書委員になればいいと思います」
「それは一体何の助言だ!?」
ちなみに、「貴方の色に染めてください」というのはどういう意味ですか? と神官長に質問状を送ったところ、三枚分の返事が「親展」と書かれ、厳重に封をされた状態で届いた。
……かなり直接的な閨への誘い文句か。確かに破廉恥だ。ヒルシュール先生は本番に使えと言ったけれど、本番も使うのは止めておこうっと。